モリアオガエル
アオガエル科 アオガエル属 Zhangixalus arboreus (Okada et Kawano, 1924)
オス、静岡県 メス、栃木県 | ||||||
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卵 ・ オタマ | 鳴 き 声 | 文献 ・ 資料 | 写 真 |
木の上に白い泡上の卵を産むことで非常に有名です。天然記念物とされている地方もあります。シュレーゲルアオガエルに似るが、体はずっと大型で、鳴き声もまったく異なります。
すべての指に大きな吸盤、指間にはみずかきを持ちます。幼体は同じ地域に棲むシュレーゲルアオガエルに似ていますが、本種の方が、背の皮膚はざらつき、目の虹彩が赤みがかることで、区別できることがあります。
分布
本州と佐渡島、どちらかというと日本海側に多く生息します。
生態
完全な樹上で、繁殖期以外はほとんど地上に降りることはあまりありません。海岸近くの低地から標高2000m以上の高地まで分布しますが、一般に山地に多く、森林に生息します。おもに小昆虫類を食べます。
生息場所
森林の林床部、草地、人家やその周辺など、広い範囲に生息します。
繁殖
5月から7月にかけて池や沼、地域によっては水田などで繁殖します。雄は池に迫り出した木の上や水面で鳴いて雌を呼びます。雄を背負った雌は直径十数cmの白い泡状の卵塊を水際の樹木の枝や岸辺の草などに付着させるようにして産みます。泡巣を造る際に1ひきの雌に数匹の雄がしがみつくことがあります。
大きさ・色
成体の大きさは、雄で42-60mm(平均57mm)、雌で59-82mm(平均72mm)です。体色は緑色ですが、地域によっては背面や手足に黒色や暗褐色の不規則な模様を持つ個体もいます。
卵の大きさは2.6mmほどで、幼生は成長するとは全長51mmほどに達します
保全情報
- 国指定天然記念物
- 平伏沼モリアオガエル繁殖地(福島県)[1941/02/28指定]
- 大揚沼モリアオガエルおよびその繁殖地(岩手県)[1972/12/08指定]
- 県指定天然記念物
- 鶴間ヶ池のモリアオガエル繁殖地(山形県酒田市)[1962/01/12指定]
- 水上町モリアオガエル繁殖地(群馬県利根郡みなかみ町小日向)[1957/09/10指定]
- 大峰山モリアオガエル繁殖地(群馬県利根郡みなかみ町小川)[1961/01/06指定]
- 清澄のモリアオガエル(千葉県鴨川市)[1965/04/27指定]
- モリアオガエル及び生息地(山梨県南部町)[1959/02/09指定]
- モリアオガエル群生地(岐阜県不破郡垂井町)[1957/07/09指定]
- モリアオガエル群生地(岐阜県郡上市)[1957/07/09指定]
- 池ノ谷のモリアオガエル繁殖池(三重県大台町)[2003/03/17指定]
- 吉水園のモリアオガエル(広島県山県郡安芸太田町)[1952/10/28指定]
- 市指定天然記念物
- ケシ子沼モリアオガエル生息地(福島県相馬市) [1972/07/11]
- 黒倉山山腹のモリアオガエル生息地(新潟県上越市)
- モリアオガエル(動物)(群馬県みどり市)[1981/12/14指定]
- モリアオガエル生息地(埼玉県飯能市)
- モリアオガエル(山梨県上野原市)[1972/7/21指定]
- モリアオガエル生息地(兵庫県加西市河内町)[1969/03/31指定]
- 竜王池のモリアオガエル(岡山県新見市大佐町小坂部)[1977/10/15指定]
- モリアオガエル生息地(岡山県新見市哲西町上神代)[1985/08/05指定]
- 秋奥のモリアオガエル産卵池 (島根県松江市八雲町) [2001/03/30]
- 町指定天然記念物
- 関山のモリアオガエル(福島県大沼郡会津美里町) [1974/12/01]
- モリアオガエル(東京都西多摩郡日の出町)
- モリアオガエルの生息地(愛知県北設楽郡設楽町)
- モリアオガエル(石川県能登町)[1969/11/03]
- 市町村文化財保護条例指定
- モリアオガエル(新潟県板倉町)
各県のレッドデータと保全情報
各県のレッドリストカテゴリーは、制定当時の環境省カテゴリーと同等の場合はそのままのカテゴリー名で書いています。
○はその県に生息している、---は生息していないことを示します。
*は、県独自カテゴリーを示します。
カテゴリ | その他 | |||
北海道 | ブルーリストh(2004) → ブルーリストh(2010) → ブルーリストE**(2019) | **北海道の外来種リスト | ||
青森県 | ○ | |||
岩手県 | D*(2001) → ランクD*(2014) | *C(準絶滅危惧)に準ずる種 | ||
宮城県 | ○ | |||
秋田県 | ○ | |||
山形県 | 準絶滅危惧(2003) → 準絶滅危惧(2018) |
|||
福島県 | 希少種*(2003) → 絶滅のおそれのある地域個体群(阿武隈高地)(2011) → 絶滅のおそれのある地域個体群(阿武隈高地)(2018) → 絶滅のおそれのある地域個体群(阿武隈高地)(2019) | * | ||
茨城県 | --- | |||
栃木県 | 要注目種*(2005) → 要注目種*(2011) → 要注目種*(2011) | |||
群馬県 | 準絶滅危惧(2002) → 準絶滅危惧(2012) → 準絶滅危惧(2022) | |||
埼玉県 | (低山帯では)希少種・(台地・丘陵帯では)危急種(1996) → 絶滅のおそれのある地域個体群(2002) → 絶滅のおそれのある地域個体群(2008) → 絶滅危惧II類(2018) | |||
千葉県 | 絶滅危惧II類(2000) → 絶滅危惧II類(2006) → 絶滅危惧II類(2011) → 絶滅危惧II類(2019) | |||
東京都(区部) | カテゴリーなし(1998) --- | |||
東京都(北多摩) | C(希少種)*(1998) → 準絶滅危惧(2010) → 準絶滅危惧(2021) | |||
東京都(南多摩) | C(希少種)*(1998) → 準絶滅危惧(2010) → 準絶滅危惧(2021) | |||
東京都(西多摩) | C(希少種)*(1998) → 準絶滅危惧(2010) → 準絶滅危惧(2021) | |||
東京都(本土部) | 準絶滅危惧(2021) | |||
神奈川県 | 希少種*(1995) → 要注意種*(2006) | |||
新潟県 | 準絶滅危惧(2001) → 準絶滅危惧(2016) | |||
富山県 | ○ | |||
石川県 | ○ | |||
福井県 | ○ | |||
山梨県 | ○ | |||
長野県 | 準絶滅危惧(2004) → 準絶滅危惧(2015) | |||
岐阜県 | カテゴリーなし(2001) → 情報不足(2010) | |||
静岡県 | 準絶滅危惧(2004) → 準絶滅危惧(2019) | |||
愛知県 | 準絶滅危惧(2001) → 準絶滅危惧(2009) → 準絶滅危惧(2015) → 準絶滅危惧(2020) | |||
三重県 | ○ | |||
滋賀県 | 要注目種(2000) → 要注目種(2005) → 要注目種(2010) → 要注目種(2015) → 要注目種(2020) | |||
京都府 | 要注目種 衣笠山個体群(2002) → 要注目種 衣笠山個体群(2013) | |||
大阪府 | 準絶滅危惧(2000) → カテゴリーなし(2014) | |||
兵庫県 | 危急種*(1997) → 絶滅危惧II類(2003) → 絶滅危惧II類(2017) | *極力、生息環境、自生地の保全が必要な種 | ||
奈良県 | 絶滅危惧I類(2006) → 絶滅危惧I類(2016) | |||
和歌山県 | 準絶滅危惧(2001) → 準絶滅危惧(2012) | |||
鳥取県 | ○ | |||
島根県 | 要注意種*(1997) → 準絶滅危惧(2004) → 準絶滅危惧(2014) | |||
岡山県 | 準危急種*(2003) → 絶滅危惧II類(2009) → 絶滅危惧II類(2020) | *存続基盤が脆弱な種 | ||
広島県 | ○ | |||
山口県 | 準絶滅危惧(2002) → 準絶滅危惧(2018) | |||
徳島県 | --- | |||
香川県 | --- | |||
愛媛県 | --- | |||
高知県 | --- | |||
福岡県 | --- | |||
佐賀県 | --- | |||
長崎県 | --- | |||
熊本県 | --- | |||
大分県 | --- | |||
宮崎県 | --- | |||
鹿児島県 | --- | |||
沖縄県 | --- |
ハペ文化
地方名
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ハペ文化
-
その他
旧学名: Rhacophorus arboreus (Okada et Kawano, 1924):Rhacophorus属の分割による学名の変更によって、日本産のアオガエル属は全てZhangixalusとなった。(2020年9月7日変更、爬虫両棲類学会より)
書籍
- 関慎太郎, 2021, 野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版, 緑書房, 東京
- カエル探偵団編, 2020, 見つけて検索!日本のカエルフィールドガイド, 文一総合出版, 東京
- 松井正文・前田憲男, 2018, 日本産カエル大鑑, 文一総合出版, 東京
- 松井正文, 2016, ネイチャーウォッチングガイドブック日本のカエル, 誠文堂新光社, 東京
- 関慎太郎, 2016, 野外観察のための日本産両生類図鑑, 緑書房, 東京
- 内山りゅう・前田憲男・沼田研児・関慎太郎, 2002, 決定版日本の爬虫両生類, 平凡社, 東京
- 前田憲男・松井正文, 1999, 改訂版日本カエル図鑑, 文一総合出版, 東京
学術論文
著者, 発行年, 論文タイトル, ジャーナル名, 巻号, ページ
原記載(1924年)
- Okada, Y., and U. Kawano. 1924. [On the ecological distribution of two new varieties of Rhacophorus in Japan]. Dōbutsugaku zasshi/ Zoological Magazine. Tokyo 36: 104–109, 144–153.
最新記載(1987年)
- Dubois, A. 1987 "1986". Miscellanea taxinomica batrachologica (I). Alytes. Paris 5: 7–95.
- Jiang, D., Jiang, K., Ren, J., Wu, J., & Li, J. (2019). Resurrection of the genus Leptomantis, with description of a new genus to the family Rhacophoridae (Amphibia: Anura). Asian Herpetological Research, 10(1), 1–12. 10.16373/j.cnki.ahr.180058
- 島田知彦・江頭幸士郎 (2019) 2013年以降に記載ないし,分類変更された日本産無尾類について. 爬虫両棲類学会報, 2019巻2号, 195–202
ウェブ・メディアなど
- ウェブ名称など, URL
- 新聞など媒体名, 発行年月日, 記事見出し, (URL)
その他
- その他
2022-09-03